マーケティングの効果が頭打ちとなり、目に見える成果が期待できなくなった今日。新たなマーケティングの手法として、注目されているのがコンテンツマーケティングです。
マーケティングの先進国アメリカで、にわかに存在感を高めたのは2010年頃でした。その後、2014年には日本でも、マーケターの間では取り沙汰されるようになり、今ではポピュラーなビジネス用語として、一般のビジネスマンにも頻繁に利用されています。
そのように、一見、市民権を得たように見えるコンテンツマーケティングという施策も、有効的に運用して、一定の成果に繋げている企業は意外と少ないようです。
その原因として、明確な目的を定め、その目的にどれだけ近づいているか、つまり効果測定をきちんと行っているか、この2点をおろそかにしていることが挙げられます。
そこで今回は、コンテンツマーケティングを成功に導く上で、なぜ効果測定が必要なのか、また効果測定を実際に行う方法などについて、詳しく解説します。
この記事の目次
コンテンツマーケティングとは何か?
今さらではありますが、「コンテンツマーケティングとは何か?」という命題について、もう一度、思いを馳せてみましょう。
本稿のテーマは、コンテンツマーケティングにおける目的の設定と、効果測定の重要性について述べることですが、それを語る前に、施策の原点に立ち返っておくことは、とても重要な意味があります。なぜなら、この施策の起点となる、定義と本質とを見定めておくことにより、自社がビジネスの大海原のどの位置にいるのか、確認することが可能になるからです。
コンテンツマーケティングの定義
「コンテンツマーケティング」という言葉が、日本のマーケターの間で飛び交い始めたころ、「ビジネスに関連したブログ記事を作成すること」、あるいは、「SEOの新手法である」、という程度の理解にとどまっていました。
どれも間違いではありませんが、施策の本質を言い当てたものではありません。これを取り違えると、手段が目的になってしまい、大した成果も出せずに、事業活動が息切れしてしまいかねません。
コンテンツマーケティング自体は、実は目新しいものではありません。コンテンツを有効活用して、マーケティング活動に活かす試みは、昔から行われてきました。コンテンツマーケティングを分解すると、既存のマーケティング手法のどれかに行き当たります。
アメリカでは、「コンテンツマーケティングは、実際には存在しない」という極論があるそうです。既にあるマーケティング手法を組み合わせただけで、新しいコンセプトは何もないではないか、という主張です。しかしこの議論は、的外れなものと言わざるを得ません。なぜなら、コンテンツマーケティングは、コンテンツファーストの考えのもとにまとめられた、統合的な技術だからです。
この統合技術を体系化したのが、コンテンツマーケティングの第一人者として有名な、Joe・Pulizzi氏です。同氏は、Content Marketing institute (CMI=コンテンツ・マーケティング・インスティテュート)の創設者でもあり、コンテンツマーケティングを次のように定義しています。
「コンテンツマーケティングは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチです。自社の見込み顧客を引き付け、最終的には収益性の高い購買行動を促すことを目的としています」。
コンテンツマーケティングの本質
コンテンツマーケティングは、マーケティング手法の一つであり、一言で言うと、「企業が顧客との良好な関係をコンテンツによって築き、顧客が自社の商品・サービスを購入し続ける仕組み」を作ることです。
自社の商品やサービスを、闇雲に宣伝するのではなく、自社の見込み顧客=リードや既存顧客が、興味を抱きそうなコンテンツを継続して提供し、自社の存在を認知させることがスタートラインです。そこから次第に、自社の商品・サービスに関心を寄せさせ、最終的には購買行動に至らせることがこの施策の本質です。
コンテンツマーケティングを始める前に確認しておくこと
マーケティングの一手法である以上、コンテンツマーケティングにも、メリット・デメリットがあることはご承知の通りです。ことに、デメリットとして指摘されるのは、「何を目的としたらいいのか、はっきりしないこと」と、「コンテンツを作成・公開したが、その効果が目に見えないこと」とされています。
日本では、2014年頃から、「マーケティングのトレンドだから」という理由で、さしたる事業目的も立てずに、コンテンツマーケティングに手を出した企業も多くありました。そういう企業の大多数は、取りあえず、ビジネス系のブログ記事を作成して自社サイトに掲載し、サイトへのアクセス数を稼ぐ、という行為を繰り返していたことでしょう。
施策を始めた当初は、それでも良かったのです。しかし、時間が経つにつれて、経営者や運営担当者は、ある疑問に突き当たったはずです。すなわち、「自社サイトへのユーザーの流入はある程度、増加はした。しかし、それが自社製品の売り上げに繋がる訳ではないし、これ以上続けて、一体何の意味がある?」という問いかけです。
ここで欠けている視点は2つあり、1つは「事業活動としての目的を設定していないこと」であり、もう1つは「現状、活動がどの程度、目的に近づいているか、可視化できていないこと」です。
コンテンツマーケティングの目的を設定しているか?
コンテンツマーケティングの実施により、どのようなビジネス上の果実を手に入れたいのか、明確になっているでしょうか。
コンテンツマーケティングのメリットとして、「比較的、運用を開始するのにハードルが低い」という点が挙げられています。パソコンやノートパッドなどのITツールや、一通りのインターネット環境が整っていて、文章の書ける人員がいれば、ビジネス系のブログ記事を作成・公開することは容易に行えます。これを繰り返せば、時間の経過と共に、自社のコーポレートサイトへの訪問者数は次第に増加していくことでしょう。かつては、この時点で「うちの会社のコンテンツマーケティング戦略は成功していますよ」と、自慢げに胸を張る経営者も多くいたことは想像に難くありません。
しかし、開始当初はそれでも良かったものの、次第にあるジレンマにさいなまれることになりました。それは、「コンテンツの作成と公開には、それなりに人的リソースと時間を費やしてきた。企業の認知向上には、多少貢献したかもしれないが、これ以上続ける意味が分からない」というものです。
施策の運営開始時に、初期投資の費用が、他の事業活動に比べて低く済むことも、コンテンツマーケティングの魅力の一つではあるのですが、このことが奇妙な現象を引き起こしていたのです。つまり、初期投資を低く抑え、簡単に始められるがゆえに、「マーケティングのトレンドでもあるし、取りあえずはやってみよう」と着手した企業が後を絶たない状況を招いたと言えます。
企業において、新たな事業に乗り出そうとすれば、しかるべき予算と人的リソースを準備し、いつまでにどれぐらいの売り上げ数字が見込めるのか、事業計画を立てるのが通常です。ところが、コンテンツマーケティングに手を出した企業の中には、この手順を踏まずに活動を始めたケースが少なくありませんでした。
事業の最終目的は、登山で言えば最終到達点、一般的には頂上ということになります。ゴールも定めず、「まずは山に登ってみた」状態が、コンテンツマーケティングという施策が継続できず、結局は失策に追い込まれる企業の共通点と言えましょう。
コンテンツマーケティングにおける事業目的は、「自社は、コンテンツマーケティングで何をなすべきか」と言い換えることもできます。ただこれは、自社のビジネスがB to B なのか、あるいはB to Cなのか。自社が取り扱う商品・サービスは何か、ターゲットとする顧客は誰かなど、企業により様々です。
では、コンテンツマーケティングの目的は、どのように設定すれば良いのでしょうか。コンテンツマーケティングに期待される効果については、代表的なものが幾つかあります。ここでは、その中から主なものを取り上げます。
コンテンツマーケティングの目的を設定する
今のところ、コンテンツマーケティングで何を達成するべきか、はっきりとは思い浮かばないのであれば、他社が設定しているコンテンツマーケティングの目的を参考にしてみると良いでしょう。
しかしこれは、多くの企業がコンテンツマーケティングに期待する効果を、単にピックアップしたに過ぎません。自社の目的として採用する際は、自社のビジネスを改めて見つめ直し、コア・コンピタンス(他社には真似のできない強み・価値)を認識しつつ、カスタマイズするようにしてください。
売り上げと業績の向上
まずは、「売り上げ数字や、業績の向上」です。利益を追求する民間企業であれば、事業活動の目的は、突き詰めれば、この一事に集約されます。ただ、全ての活動の目的を、売り上げの拡大に設定してしまうと、足元で何から始めていいのか戸惑ってしまうことにもなりかねません。そこで、最終的な事業目標をKGI= Key Goal indicator (重要目標達成指標)に、中間指標となる数値をKPI= Key Performance Indicator (重要業績評価指標)に設定し、コンテンツマーケティング運営に活かすと良いでしょう。
企業認知拡大とブランディング
次に、「自社の存在を、消費者に認知させること」です。これには、ブランディングの効果も見込まれています。
前述したJoe・Pulizzi氏が定義したように、ターゲットと認める顧客に対し、有益で価値のあるコンテンツを、継続して提供することにより、自社の存在を知らしめ、自社の商品・サービスに関心を寄せさせ、最終的には購買行動を起こしてもらうこと。これこそが、コンテンツマーケティングの施策の本質です。
そうであるならば、最初の足掛かりは、消費者が欲しがるコンテンツを提供し、自社の存在に気付かせることです。多くの消費者と接点を持ち、自社や商品・サービスへ興味を持たせることが重要です。今すぐに購入を検討する訳ではなくても、いつかその製品・サービスが必要になった時、他社ではなく、自社の存在を思い浮かべてもらうことが肝要なのです。
またこれは、ブランディングにも通じる考え方でもあります。ブランドとは、企業と顧客との約束です。つまり顧客から、「この会社の商品を購入すれば、必ず満足させてくれる」という信頼感を勝ち取ることなのです。
潜在顧客の獲得と育成
マーケティングでは、消費者の購買に対する態度や意識は、常に変化するものと考え、そのプロセスにおけるフェーズごとに呼称を変えています。
はじめに、自社の存在はもちろん、自らが抱く欲求にすら気付いていない「潜在顧客」。次に、何が欲しいかは何となく分かっているけれど、今すぐ購入しようとまでは思っていない「見込み顧客=リード」。さらには、ある程度、購入の意思が固まり、自社を含めて製品の比較・検討段階に入っている「ホットリード」。
コンテンツマーケティングでは、それぞれの段階にいる消費者に対し、現状で一番求めている情報を、コンテンツとして的確に提供することにより、次のフェーズへとステップアップさせることが可能です。マーケティングでは、この一連の流れを、「リードナーチャリング」と呼び、施策の主要な部分でもあります。
コンテンツマーケティングでは、日本よりも10年先を進んでいるといわれるアメリカにおいては、シスコシステムズやP&G(プロクターアンドギャンブル)、マイクロソフトなど、グローバルな大企業が、コンテンツマーケティングを効果的に活用しています。これらの企業がコンテンツマーケティングを利用する理由として、コストの削減、売り上げ数字の拡大に加えて、「企業に忠誠心を抱く、良好な顧客を獲得できること」を挙げています。
「企業に忠誠心を抱く良好な顧客」とは、自社と他社との差別化を図り、自社や自社の商品・サービスに愛着を感じ、常に自社を選んでくれる顧客ということになります。日本でいえば、「上顧客」ということになるでしょう。
コンテンツマーケティングという手法を用いれば、この上顧客を1人でも多く獲得しようという目的を果たすことができるのです。
コンテンツマーケティングにおける効果測定の難しさ
コンテンツマーケティングの運営担当者にとって、頭を悩ませる課題は幾つか存在します。1つは、自社がターゲットに定める見込み顧客=リードが何を求めているか、それを探り出し、コンテンツ作成に反映させることです。もう1つは、いかにリードとの接点を増やし、最適な形でコンテンツを提供できるか、ということ。そして、今1つ大切な課題は、どのように効果測定を行い、コンテンツをチューニングするか、ということです。
コンテンツマーケティングにおいてこの効果測定は、しばしば取り沙汰されるテーマであり、その難しさはデメリットの一つに数えられることでも分かるように、容易に行えるものではありません。
効果測定がやりにくい理由
ではなぜ、コンテンツマーケティングにおける効果測定は、困難が伴うのでしょうか。
コンテンツマーケティングの効果を測定するためには、施策の目標を明確にすることが求められます。コンテンツマーケティングは、WEBサイトを中心としたオウンドメディアへの集客と、リードの育成が主要な業務ですが、全ては「コンテンツありき」の施策と言えるでしょう。
先に述べたコンテンツマーケティングの定義には、「コンテンツマーケティングは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチ」とあります。この中の、「価値のある一貫したコンテンツ」とは、オーディエンスが良質と認める情報に他なりません。
効果測定は、客観的なデータに基づき、最終目標と照らし合わせて、活動がどのような状況にあるのか、判断する行為です。オーディエンスが良質と認める情報とは、「有益なコンテンツ」と言い換えることができますが、これは、定量的データで数値化することが難しいのです。
また、施策の他の効果を測るために、目安となる指標が幾つもあることも、要因の1つと言えます。オウンドメディアへの集客の効果を測定するには、PV数、セッション数、ユニークユーザー数などが指標となるでしょう。さらに、リードの育成(リードナーチャリング)の進捗度合いを測るのであれば、問い合わせ件数や、eブックやホワイトペーパーなどのダウンロード数、セミナー参加率、SNSにおける「いいね」獲得数やシェア数など、多岐に渡ります。これらを統合して整理し、施策の活動状況を評価するには、専門的な知識が必要になる場合もあります。
効果測定に必要な指標
ここからは、実際に施策の効果を見極める際、用いられる指標について見ておきます。
コンテンツマーケティングを活用することにより、何を達成したいのか。その最終目標がKGIであり、そこへ至るまでの中間指標がKPIです。目的地が変更されれば、ルートやアクセス手段は変わります。コンテンツマーケティングの目標は、大きく2つに分けることができます。1つは「潜在顧客=新規顧客の獲得」、もう1つは「見込み顧客=リードの育成」であり、それに伴いKPIも異なります。
KGIが「新規顧客の獲得」の場合
いくら良質なコンテンツを作成しても、閲覧してもらえなければ意味がありません。自社サイトのコンテンツがどの程度、ユーザーの目に触れているかを把握しておく必要があります。それには、以下のKPIの設定が考えられます。
a.PV=Page View (ページビュー)
PVは、その自社のサイトがユーザーにどの程度、認知されているかを測る、最もポピュラーな指標です。ユーザーのPCに表示されるブラウザ上にWEBページが現れれば、「1PV」と数えることができます。例えば、10人のユーザーがサイトのトップページを訪問すれば、その時点でPV数は10カウントになります。次いで、そのうちの5人がページAを、2人がページBを、残る3人がページCを閲覧すれば、PV数は合計で20PVという訳です。
b.セッション数
セッションとは、特定期間内にWEBサイト上で発生した、ユーザーによる操作のことです。1回のセッションには、複数のページ閲覧、イベント、「Face book」の”いいね”などのソーシャルインタラクティブ、eコマースにおける注文回数などが含まれています。
ユーザーは、1人で複数のセッションを行うことが可能です。複数のセッションは1日で発生することもあれば、数日、あるいは数か月空いた後に、再度開始されることもあります。セッションには有効期限が設定されており、1回のセッションが終了した時点で、次のセッションが新しくカウントされます。セッションは、以下のいずれかで終了とみなされます。
1つ目は、何の操作も行われず、30分が経過した場合。2つ目は、午前0時を過ぎてから、再度の操作があった場合。3つ目は、ユーザーが、あるキャンペーンを経由してサイトに訪問し、離脱後に別のキャンペーンを介してサイトに再訪した場合などです。
c.UU数(ユニークユーザー)
ユニークユーザーとは、一定の期間内にサイトを訪れたユーザーの人数を指しています。一定の期間内、つまり集計期間内であれば、同一ユーザーがサイトを何回訪問しても、「1UU」としてカウントされます。これは、自社サイトに関心を持っているユーザーが何人いるか、類推する物差しになるのです。
d.サイトにおける滞在時間・回遊率
検索行為から自然流入してくるユーザーは、サイトにとって大事な訪問者ではあります。ただサイトの訪問者は、コンテンツに興味を示さなければ、すぐにサイトからは離脱してしまうでしょう。ユーザーが、サイトに掲載されているコンテンツに、どの程度関心を示しているかを測る指標に、「サイトの滞在時間」と、「サイトの回遊率」とが挙げられます。
前者は、ユーザーがサイトを閲覧していた時間。後者は、ユーザーが最初に訪問したページから、他のページへ何回遷移してコンテンツを閲覧したかを示す値です。サイトの滞在時間が長く、回遊率が高いほど、ユーザーのコンテンツへの関心度は高いことを表しています。
e.問い合わせ件数
ユーザーが上記のいずれかの行動を起こせば、より多くの情報を求めて能動的に動いた証しと認め、マーケティングでは、「CV=conversion (コンバージョン)」と呼び、施策の遂行が一歩前進したものと捉えています。
コンバージョンとは、日本語に直訳すると、「転換」を意味します。WEBマーケティングでは、「成果」を指す用語でもあります。B to Bビジネスや、B to Cビジネスでも不動産や戸建て、あるいは金融商品など、比較的高額な商材を扱っている場合、サイト内で成約にまで漕ぎ着けるケースは稀(まれ)です。
このような場合は、商品・サービスに関する問い合わせ、資料の請求、セミナーへの参加申し込みなど、ユーザーの方から何らかのアクションを起こせば、施策の目標が達成されたものと評価されます。この時点で、「潜在顧客」はその先の「見込み顧客=リード」へとステップアップしたものとみなされるのです。
KGIが「見込み顧客の育成」の場合
前述した定義では、コンテンツマーケティングの目的を「価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することで、~中略~自社の見込み客を引き付け、最終的には収益性の高い購買行動を促すこと」としています。見込み顧客にとって価値のあるコンテンツを提供することで、成約にまで導くことができるでしょう。
さらに、自社への顧客エンゲージメントを向上させ、常に自社製品・サービスを選んでくれる「優良顧客」へと昇華させることも可能になります。そして、そのような優良顧客は、自社や取り扱う商品について、SNSなどを介してシェアしてくれる存在にまでなり得るのです。この一連の流れを「リードナーチャリング」と呼び、達成するためには、以下のKPIが設定されます。
a. リテンション率
リテンションとは、日本語では「維持」または「保有」を意味し、そこから派生して、マーケティング用語でリテンション率とは、「既存顧客維持率」を指します。
リテンション率は、既存顧客が、自社の商品・サービスにどの程度定着しているか、数値で表した指標です。リテンション率を維持し、向上できていれば、顧客満足度も高く、企業と顧客とは良好な関係を築いていると判断されるのです。
リテンション率は、下記のように計算することできます。
リテンション率=(集計期間終了時の顧客数-集計期間中に獲得した顧客数)÷集計期間開始時の顧客数×100
例題を1つ出しましょう。
集計を開始した時点で、顧客は100人いたとします。集計が終了した段階で、顧客は20人増えましたが、集計期間中に15人が解約しました。この場合は、
(115-20)÷100×100=95となり、リテンション率は95%です。
b.エンゲージメント率
Engagement=エンゲージメントとは、日本語に訳すと、「契約」または「約束」という意味になります。マーケティングの分野では、「関与、つながり、愛着」などを意味する用語であり、そこから派生して、顧客との関係性を強化し、売上の向上に結び付けることを、顧客エンゲージメントと呼んでいます。そして、その企業に対する顧客の愛着度を、数値で客観的に表した指標を「エンゲージメント率」と称しています。
エンゲージメント率の測定方法として、2通りの方法があります。
1つは、インターネット上でのアンケートです。
これは、「Net Promoter Score=ネットプロモータースコア」というもので、頭文字を取って「NPS」と称されています。算出方法は、「この商品・サービスを、あなたの知人にどの程度、薦めたいですか」という質問を設定し、0から10の段階で回答を求めます。その回答結果から、顧客を3つのカテゴリーに分類します。
0~6:批判者
7~8:中立者
9~10:推奨者
「推奨者の割合」-「批判者の割合」=NPS(%)
NPSが高いほど、その企業の商品・サービスに対する顧客エンゲージメントが向上していることが分かります。
もう1つは、SNSによる測定方法です。
FacebookやTwitterなど、SNSの利用者が増加するにつれ、企業に対するユーザーの動向も観察することが可能になりました。企業が自社のアカウントを取得して投稿した内容に対し、ユーザーがどのようなアクションを起こしたかを算出することにより、エンゲージメント率を測定することができます。
ここでは、FacebookとTwitterにおける、エンゲージメント率の測定方法をご紹介します。
【Facebook】
Facebookにおけるエンゲージメント率は、エンゲージメント数を投稿がリーチした人の数で割った数値です。
Facebookでのエンゲージメントは、ユーザーが、「いいね」、「シェア」、「コメント」、「クリック」のいずれかのアクションを取った時にカウントされます。これらのアクションが多ければ多いほど、エンゲージメント率は高いことを示しています。
管理画面の、「投稿のエンゲージメント」をクリックすると、投稿ごとにリーチ数、アクション内容、エンゲージメントなどを確認することができます。
【Twitter】
Twitterにおけるエンゲージメント率は、twitterがエンゲージメントとして集計している総数を、インプレッション数で割ったものです。
エンゲージメントは、「クリック」、「返信」、「フォロー」、「リツイート」、「いいね」の5つのアクションでカウントされ、これらの総数で表します。
一方、インプレッションは、ツイートがユーザーに閲覧された回数です。1人のユーザーが、そのツイートを複数回見れば、その都度カウントされます。管理画面の「アナリティクス」を見れば、エンゲージメント率を確認することが可能です。
コンテンツマーケティングの効果測定の方法
ここからは、コンテンツマーケティングの効果測定について、具体的な方法を解説します。
コンテンツマーケティングにおける目標(KPI)は、最終的なゴールである売り上げ数字(KGI)に結び付くものである必要があります。最終ゴールに辿り着くためには、道程の途中で、今どの辺りにいるかを確認できる目安が要るのです。
登山であれば、現在の地点が頂上までの道筋の何合目にあたるのか、目印となる立て札にあたるでしょう。
マーケティングでは、見込み顧客が、商品・サービスの購入にまで至る意識の変化、および行動変容を「購買行動プロセス」と呼んでいます。ただこれは、顧客からの視点で組み立てたもので、企業側にとっての最終ゴールとは、必ずしも重なりません。
これに対して、同一のプロセスを企業からの視点で描いたものを、「マーケティングファネル」と称しています。ファネルとは漏斗(じょうご)のことで、ファネルの入り口は大きく開かれており、この部分に多くの見込み顧客=リードが集結します。リードは、購買行動プロセスの各フェーズを通過するごとに、ふるいにかけられ、最後は購買に至る顧客だけが残る仕組みです。
ファネルを見れば、見込み顧客が、自社や商品・サービスに「興味を持つ・関心を払う」、「探す・調べる」、「比較・検討する」、「購入を決定する」、「購入する」など、各段階を踏むたびに、数が絞り込まれていく様子が窺えます。
この際、ファネルの出口に、売り上げ数字や顧客獲得数、成約件数など、具体的な数値を設定しておけば、逆算することにより、各フェーズでの数値目標が自ずと明らかになるでしょう。
例えば、以下のように設定できます。
KGIを「月間売り上げを3,000万円」に設定した場合
【興味を持つ・関心を払う】段階
KPIとしての数値目標:自社サイトのトップページのアクセス数を3万PV/月に設定。
↓
【探す・調べる】段階
KPIとしての数値目標:自社サイトの商品紹介ページのアクセス数を1.5万PV/月に設定。
↓
【他社との比較・検討】段階
KPIとしての数値目標:見積り依頼の件数を、月に1,500件獲得。
↓
【購入を決定】段階
KPIとしての数値目標:営業担当への問い合わせ件数を600件獲得。
↓
【購入する】段階
KPIとしての数値目標:100万円分の商品・サービスを購入する顧客を、毎月30人確保。
まとめ:コンテンツマーケティングの成功は目的設定と効果測定の実施にあり
今回は、コンテンツマーケティングにおける効果測定の大切さと、実際の測定方法について、詳細に述べました。
コンテンツマーケティングを実践する前に、「この施策を行うことにより、何を成し遂げたいのか」という目的の設定が重要です。これが無いのは、未開の地に地図も持たずに足を踏み入れるのと同じことです。明確な事業目的も定めず、コンテンツマーケティングに手を出した企業の大半は、迷走した挙句に施策を打ち切る結果を招いたのです。
そして、事前準備としてもう1つ大切なことは、活動がどの程度進んでいるのか、進捗を可視化できる方法、すなわち効果測定を確立しておくことなのです。
企業がコンテンツマーケティングを実施する上で、設定可能な目的は、「売り上げと業績の向上」、「企業認知拡大とブランディング」、「潜在顧客の獲得と育成」の3つに集約されます。
コンテンツマーケティングにおける効果測定は、実は意外と難しく、デメリットの1つに数えられているほどです。
効果測定を実行に移しにくい理由としては、ターゲットとする顧客にとっての「良質なコンテンツ」が、定量的なデータでは数値化しにくい点が挙げられます。
また、それ以外の効果を測定するための指標は、逆にあり過ぎることも理由の1つです。サイトへの集客効果を捉えるには、PV数、セッション数、ユニークユーザー数などが指標となるでしょうし、リードナーチャリングの進捗度合いを可視化するのであれば、問い合わせ件数や、eブックやホワイトペーパーなどのダウンロード数、セミナー参加率、SNSにおける「いいね」獲得数やシェア数など、多岐に渡ります。これらを統合・整理し、施策の活動状況を評価するには、専門的な知識が必要になるでしょう。
効果測定に必要な指標は、大きく2つに分類できます。これは、KGIを何に設定するかで、KPIも異なるためです。
KGIが新規顧客の獲得の場合、KPIはPV数、セッション数、ユニークユーザー数、サイトにおける滞在時間と回遊率、問い合わせ件数などが考えられます。
一方、KGIが見込み顧客の育成の場合、指標となるKPIには、リテンション率、エンゲージメント率などを設定することで、効果測定が可能になります。
最後に、コンテンツマーケティングにおける効果測定の具体的な方法ですが、これはマーケティングファネルを利用すれば、顧客の購買行動プロセスごとに、詳細な数字を当てはめることで、効果測定に必要な数値を指標として設定することが可能です。
いずれにしろ、コンテンツマーケティングを成功へと導く秘訣は、「コンテンツファースト」の視点に立つことが不可欠です。
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