「企業出版」を成功させる具体的な方法論とは?その知識と秘訣

企業出版に興味があるけど、具体的にどのような書籍なのか、編集や制作方法がわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、カスタム出版を成功させるための秘訣と、必要不可欠な知識・手法について紹介します。

この記事の目次

「商業出版」と「自費出版」

「商業出版」と「自費出版」

出版物は大きく分けると「商業出版」と「自費出版」があります。ここでいう出版物というのは、リアル書店やネット書店などで一般的に流通している雑誌や本などを意味し、私たちが購入できるものを指しています。

まず商業出版ですが、これは出版社が自ら企画して販売することで、実際に販売して利益が出ると考えて作られた書籍や雑誌などを指します。雑誌などでは、広告を掲載してその広告料でも利益を上げている場合もあります。

一方で自費出版とは、出版したい人や企業がお金を出して作る本を意味し、出版社は依頼を受けて、依頼者が作りたいテーマでカスタムし本を制作します。

「企業出版」は、この自費出版の中に含まれるものですが、一般的に個人からの依頼についてはそのまま「自費出版」と呼び、企業などがクライアントになって出版社に依頼するものを「企業出版」と呼びます。

かつての自費出版といえば「自分の半生を1冊にまとめたい」という人や、会社の創業社長が仕事の苦労話を綴ったりしたものが多かったのですが、近年は企業が目的を持って本を作るケースが増えてきました。そのため、それぞれを区別するようになったのです。

その目的というのが、著者の知名度向上であったり、商品のプロモーションであったり、企業のブランディングであったりします。

そして目的によっては、出版の形が書籍でなくパンフレットや小冊子などの様々な形にカスタムされることから「カスタム出版」とも呼ばれています。中でも、企業のブランディングを目的としている書籍の出版を「ブランディング出版」と呼ぶことがあります。また、商業出版と企業出版の中間的な出版の仕方もあり、様々なスタイルの本が誕生しています。

出版社にとって「企業出版」とは?

出版社にとっての「企業出版」

では、出版社にとって企業出版というのは、どのように捉えられているのでしょうか?ここで少し、出版社が本を出版してどのように利益を上げているかを説明しておきます。

出版社も当然ながら利潤を追求する事業組織なので、本が売れて利益が出ることを目指しており、本の制作予算はおよそ60%台を採算分岐点として組むのが一般的です。最初に印刷された部数を「初版」といい、60%程度売れたところで採算はトントンになります。そして、それ以上に売れれば利益が積み上がっていく仕組みです。

最初に印刷された分(初版分)が売れてしまうと新しく印刷が行われ、それを「増刷(ぞうさつ)」あるいは「重版(じゅうはん)」ともいわれ、重版が出来上がるのを「重版出来(じゅうはんしゅったい)」とも呼びます。

重版に関しては、初版でかかった制作費がかかることなく、印刷費や製本費もそれほど負担とならないので出版社にとっては丸々儲けになってきます。重版を繰り返すことは出版社にとって非常に大きなメリットをもたらすため、商業出版についてはこの重版を目指して本が企画され、制作されていきます。

一方、自費出版に関しては基本的に重版が期待できないので、初版分で利益が確保できるように予算組みされています。逆にいえば、「重版させようとして制作はされない」ということでもあります。つまり、出版社においては商業出版が主な事業の柱であって、自費出版はあくまで脇役になります。

ここを理解しておかないと、企業出版は成功しません。さらに、本を制作することと販売することは切り離して考えられていることも知っておかなくてはなりません。

本は、一切「安売り」ができないことをご存じでしょうか。古書店などを除けば、本は書店でもコンビニでもネットでも定価販売しかされていません。これは「再販売価格維持制度(再販制度)」という法律で定められているからです。基本的に、独占禁止法によってメーカーが小売店の販売価格を決めることはできないことになっているのです。

しかし、著作物に関しては例外的にそれが認められています。これは、本の出版が文化的な事業であり、日本全国にきちんと本が行き渡るようにという意図があるからです。

制作された本は「取次会社」と呼ばれる問屋を通して全国の書店に届けられる仕組みになっていますが、販売価格が決められているかわりに、売れない本は出版社に返していいというルールもあります。つまり、戻ってきたものは在庫となってしまうので、出版社は売れる可能性の低い本は流通させたがらないという事情があるのです。

企業出版の場合、本を制作してクライアントに納品するだけの場合と、書店に配本してくれる場合の2つのパターンに分かれていることを知っておきましょう。

出版社によって、どちらかにだけ対応しているケース、流通させる際に別なコストがかかるケースなどがあるので、こういった条件についても依頼する前に確認しておく必要があります。

出版社ごとで異なる特性・強み・効果

特性・強みとそれに伴う効果は出版社ごとに異なる

現在、企業出版を行っている出版社は少なくとも30社以上あり、それぞれに強みや特性を持っています。

たとえば「アスコム」であれば医療・健康系に強く、「プレジデント社」であれば雑誌「プレジデント」の読者向けとしてビジネス系にアドバンテージを持っています。「幻冬舎」は専門の会社を立ち上げてかなり企業出版に積極的で、本の宣伝や流通にも力を入れています。また、「PHP」はブランド力を背景にクライアントの著者や企業に箔がつく…といった具合です。

つまり、自社のブランディングをどのように行うかは、どんな出版社を選ぶかが極めて重要だということになるのです。

また、出版後の本のプロモーションについては、出版社によって大きく考え方が異なっています。前述したように、本を作ったらそれを引き渡して終わりにする出版社もあれば、流通させる場合は別料金を請求する出版社もあるのです。

企業出版といえどもテーマや内容に売れる要素があれば、商業出版のように宣伝に力を入れてくれるところもあって、その対応は千差万別になります。

企業出版の成功に必要なコンサルティングとは

「企業出版」のコンサルティング

これまで述べてきたように、ブランディングのための出版といっても、成功させるためには詳細な知識とノウハウが必要になってきます。自社の扱う商品やサービスがどんなジャンルに属するのか、また自社をどのような存在として社会に認知してもらいたいのかによって、最適な出版社を選ばなくてはなりません。

しかし、出版社と企業は、微妙な関係に陥ることがあります。 商業出版でいえば、著者や監修者などに対して編集者やライターが取材をした上でいろいろと意見を述べつつ、時にはダメ出しをしながら制作していきます。これは、いいものを作る上では欠かせないスタンスで、お互いにリスペクトしながらも意見を戦わせてクオリティを高めていくプロセスとなります。

その一方で、企業出版は著者の立場である企業から制作費用が出ていることで、受注者とクライアントという関係ができあがります。そうなると当然、お金を出している側である企業の意見が強くなり、受注側である出版社が意見しにくくなってしまいます。出版社の中には「お客様が作りたい本を作ればそれでいい」という姿勢に徹してしまうこともあるのです。

企業側の作りたい本を作ることが企業出版の目的ではありますが、社会に受け入れてもらえるものにするには、プロの意見やテクニックがなくてはなりません。

本を作ることにかけては、当然ながら出版社の制作担当者(編集者)はプロフェッショナルであり、多くの知識と経験を持っています。その知見を活かし、編集者とどのように付き合っていくかも、企業出版を成功させる秘訣の1つであります。

そこで必要となってくるのが、中立的な立場で企業ブランディングをコンサルティングする弊社のような存在というわけです。 資産運用するときにファイナンシャルプランナーに相談するように、企業ブランディングにおいても信頼できるコンサルタントが欠かせません。

証券会社や保険会社がお客のメリットを無視して手数料の高い金融商品を勧めてくるように、受注する側にも事情があり、ときにはそれを優先されてしまうことがあります。それに対し、受注側の事情も把握しつつ、発注する側の企業の想いに寄り添える中立的なコンサルタントは、Win-Winの関係を築くことができるのです。

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